カフェで仕事してたら隣の大学生がカップルになった

カフェで仕事をしていると隣の席が空いた。都内なら、どの駅にでもある普通のカフェ。夏休みだからか、下は中学生くらいから、上は資格試験の勉強をしている人まで混み合っている。

それにしても、街のカフェはテーブルの距離が近い。こっちはパソコンいじってるだけだからいいが、2人連れなら会話がまる聞こえだ。イヤホンをすれば良いのだが、あいにく今日は持っていない。

少し経つとその空いた席に若い男女2人組がやってきた。私の右手になる壁と一体化したソファに女子が座り、向かい側に男子が座った。女子は自分の左側、つまり私の右側にドサッとおみやげやら買い物の紙袋やらを置いた。荷物が多い女子って荷物多いよな。

男はこう切り出す。「どうしたの、相談って。何かあったの?」モテそう。

女子はしばらくの間黙り込む。数秒の沈黙の後、やがて女子はおずおずと話を始める。「相談っていうとすごく深刻な話に聞こえるかもしれないんだけど、そんなに大したことじゃないんだ。」

「そっか。俺で聞けることならなんでも話してよ。」と青年。目鼻立ちがはっきりした今風の男の子。気遣いもできる。モテそうだけど嫌味がない。

「うん。」女子は深く息を吸い込む。いや、聞くつもりはないんですよ本当に。深刻なトーンでこう続ける。「この間一緒に○○に行ったでしょ。あれから少し考えたんだけど……。」

ん。げ、別れ話か。今、んって入れたらン・ダグバ・ゼバって予測候補出たわ。

「えっ」何かを覚悟したかのような好青年。顔は見てないけど。警戒する雰囲気を漂わせてる。それとともに、2人の間に緊張感が走る。

ひと呼吸おいて女子。「帰ってから、それから数日が経ってから、いろいろ考えたんだ。それでね…」でも言葉はずいぶん明るい。変なの。

「それで、これからもこんな風に一緒にどこかに行ったり、遊んだり、何かを見たり、ずっと一緒にやっていきたいなと思ったんだ。」

好青年「えっ」女子「えっ」(俺「???」)

どういう展開なんだ!でも、なんか言い切った感じ出してホッとしてるようだ。そして、おれはさっきから仕事が進んでいるのかいないのか。

女子「あー、なんか恥ずかしくなってきた」

あっ、そういうことか。告白?したのか。駅前のカフェで。隣に昼間から仕事さぼってるみたいな30の中間地点を曲がろうかというおっさんいるのに。

うー言えない、でも言わなきゃ。なんて言えばいいんだろう、わかんない。ってか。

良かった、言えた。私が伝えたかったことは全部言えたはず。ずっと言いたくて言えなかったこと。本当なら今日の帰り道までとっておこうと思ったけど、待ち合わせの時に笑顔を見たらもう我慢できなくなって、カフェだろうがなんだろうが、もう今すぐ伝えなきゃいけないと、とにかくそう思った。周りは見えないってこと。でもそれは視野が狭くなってるとかそういうネガな話じゃなくて、さっきの瞬間、たとえ話ではなく世界には私と彼の2人しか存在していないみたいだった。でもヤバい、冷静になったら突然何を言い出すんだって感じだよね。恥ずかしくなってきた。帰りたい。ってか。

で、好青年。「そっか。なんかすごい思いつめた顔してたからどんな話かと思って。これからはもう遊ばないとか言われるのかなとか。」

なるほど。

「でもなんか嬉しい。マジで俺もおなじことを考えてた。」

女子「えっ」(俺「えーー!」)

「だからさ、付き合ってください。」

女子「うそ。マジ。ヤバい。ありがとう。てか嬉しい。」うんうん。「なんか恥ずかしくなってきた。」

で、その後もいつからそう思ってくれてたのかとか、遠距離恋愛になってもやっていけるかなとか、そういう話をしていた。

まぶしくて灰になった。きっとこんな感じの幸せな日々がやってくるよ。

ちょうど仕事も終わった。明日もがんばろう。

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