石巻で日本の最高の味。寿司正で極上の味を体験した夏の終わり

石巻には会いたくなる人がいる。それも、一人や二人じゃなく。東北や宮城に行く用事ができた時、いつも頭に思い浮かぶのは、そうした人たちの顔だ。今回は石巻に寄れるかな、誰のところに行こうかな、という具合に。

街自体はそれほど大きくない。仙台のような大都市ではないけれど、もっと山あいの小さな村とは比べればずっと都会的だ。でも、この街は人の距離が近い。初めて会う人でも、前からの知り合いのように受け入れてくれるし、不思議とこちらもくつろぎを覚える。

震災後は若い人が街にやってきたり、戻ってきたりすることも多くなったそうだが、良い意味で、世代を超えて人々がせめぎ合っている。

どの世代にも、自分の仕事や流儀を追い求めるカッコ良い人がいるのだ。彼ら彼女らは石巻を声高に語らない。あくまで自分たちの手の届く世界を大切に扱うのだ。

皆、この街で自分のなすべきことを持っている。そんな人たちが街のあちこちに、いろいろなジャンルにいる。とても刺激的でワクワクする。この感じが、僕が感じる石巻らしさなんだと思う。

旅行期間と行きたい場所の休みが重なることほど口惜しいものはない。今回の滞在では、これまで行くチャンスがなかった、寿司正を訪れることができた。

石巻で銀座のような本格的な江戸前寿司が食べられると、その噂は県外まで届く寿司正。お店は渡波駅から歩いて5分ほど。店構えは日本のどこにでもありそうな地方の寿司屋。え、本当にこれが寿司正? というのが最初の正直な感想だ。

だが、引き戸を開けると、外観とは不釣り合いなほど洗練された美しい店内。カウンターの中から、店主の阿部さんが人懐っこい笑顔で迎えてくれる。 

寿司正は、日本酒「日高見」を醸す平孝酒造の代表・平井さんに紹介していただいた一軒だ。寿司王子の異名をとる平井さんは、各地の江戸前寿司を食べ歩いた寿司通として知られ、日高見も「魚でやるなら日高見だっちゃ」というコピーの通り、寿司や魚と合わせるために設計された日本酒だ。そんな魚通が「石巻で寿司なら」と太鼓判を押してくれたのだ。

日高見(ひたかみ)− 田島屋酒店

自らの立ち位置について「石巻前寿司」と掲げる寿司正。いうまでもなく、これは江戸前寿司にちなんだ造語。江戸前寿司とは締めたり、煮こんだり、漬けたりと、ひと手間加えて提供する寿司のこと。元々は保存の意味合いが強かったが、魚を本当に美味しいベストな状態で食べるために施す、繊細な職人技というイメージが近いのではないか。阿部さんも「美味しいネタをすぐ食べて美味しいのは当たり前。そこにひと手間加えることでもっと美味しくしなきゃ」と話していた。

突き出しのネギトロ、アワビ、ほっき貝、あなご、握りで出てきたつりあじ、小鯛、赤いか、イワシ、あなご、そしてまぐろまで、食べたもの一例だが、間違いなくどれも最高の味。ネタは地元・石巻港のほか、築地をはじめ各地からその時期の一番良いものを取り寄せているという。

ポイントは地産の材料しっかり使いつつ、地元以外からも集めていることだろう。石巻の金華山沖は世界三大漁場のひとつとも言われ、種類豊富な極めて質の良い海産物が獲れる海域。当然、揚がる魚介類も素晴らしいものがばかりで、築地で最高値がつくことも珍しくないそうだ。

そんな地元のネタと、全国から選りすぐったネタを使い分け、それぞれの味を最大限まで引き出した寿司を作るのだから美味しくないわけがない。地元では「東京並の価格だからめったに行けない」という声も聞いたが、そういう意味では東京の一流の店よりもずっと安いのではないだろうか。

店主をして「これ以外には選べない」と言わしめた地元産の海苔や、全国的に有名な産地・閖上にも味では負けていないという渡波の赤貝など、日本を代表するがもの少なくないという。実際、味の違いがハッキリわかるほど美味しい。

早い時間はカウンターにまだ人が少なかったこともあり、何かにつけて「美味しいだろ」と自信にみなぎった笑顔を見せてくれる阿部さん。プロラグビー選手として活躍する息子さんの話なども聞きながら、極上の寿司を堪能する贅沢な一夜だった。

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