髙嶋政宏『変態紳士』カルト的熱狂を生み出している問題作を読んでみた

髙嶋政宏はわかりやすいな、と思います。いろんな意味で。

最近バラエティで見かける機会が割とあって、 人並みならぬこだわりを披露しているなと思えば、次の一手がこの『変態紳士』です。Amazonで検索したら「18歳以上ですか」ってどんな本書いてるんですか。

この本は最近ではSM好きの名バイプレイヤーとして知られる髙嶋政宏が、どのように現在の自分自身を作り上げたかを曝しています。目の前に髙嶋政宏がいるかのような臨場感ある語り口で綴られていて、暑苦しくないと言えば嘘になります。

髙嶋兄、ここからは彼の愛すべきキャラクターにふさわしい「あにぃ」の愛称で呼ばせていただきましよう、彼はとにかくこだわりが強い。

あにぃは自分が好きなものには一才の妥協を許さず、これだと信じたものは世間一般の評価よりも自分の勘を貫く、頑固でこだわりの強い男なんです。その一方で試してみて肌に合わないと思えば、すぐに考えを改める柔軟な(気まぐれ?)一面も持ち合わせています。

例えば、芸能人の両親に地方ロケに連れられることが多かったあにぃは、8歳から駅弁が大好きなんだとか。

現在も自身が新幹線を使うときには必ず駅弁を楽しんでいるそうですが、このマイルールに彼らしさがにじみ出ています。

新幹線には大抵東京駅か品川駅から乗りますが、新横浜駅から新幹線が動き出すまてまはら駅弁に一切手をつけてはならない。僕はトイレに行くときに「すみません」と言って、他の乗客の前を通るのが嫌なので、いつも通路側の席をとります。絶対にです。(髙嶋政宏『変態紳士』p.86)

新幹線に乗ったことがある人であれば、一度は感じたことがあるかもしれない些細なことですが、この圧であにぃに説明されたら、我々にできるのはただうろたえることばかりです。

グルメ以外にも、健康法、プログレ、水素水…沢山のこだわりを持つあにぃですが、現在の自分に凝り固まることなく、常に新しいものを受け入れる自然体なところが魅力でもあります。

雑誌や本、映画でもなんでもいいんですけど、何か心が動かされるものが目の前に来る瞬間って、誰でもあると思うんですよ。建築の雑誌でも、寿司職人の本でも、プラモデルなどでもいいですね。そのときに、「あ!もしかしたらこれはちょっと面白いかも」と思って、きちんと立ち止まれるかどうかが大事ですよね。偶然をキャッチする力。これはもう、流行っているからとか、周りがやっているからとかじゃなくてらただただ自分が好きかどうかに素直に従う。(p.19)

そう、あにぃは真っ直ぐなんです。誰よりも強く、純粋に。

とは言え、あにぃがそんな風に振る舞えるようになったのは比較的最近のこと。小学生から高校2年まで110キロあり、意を決して夏休みにダイエットしても同級生の番長的な存在だった石黒賢に「髙嶋はガンになった」と言いふらされて反論できず。

しかし俳優として、人間として様々な経験を積み、成熟していくにつれてあにぃの中に変化が生まれ、ある時「どんなにカッコつけても、誰も僕なんかに注目していない」ことに気づきます。

きっと、あの日、僕は「変態」になったんです(p.11)

変態とは単にSMが好きとか、女性の中を(文字そのままの意味で)覗きたいとか、そういうことにとどまらないんです。あにぃにとって変態とは彼の生きるアティチュードであり、自由への宣言なんです。

ここからです、あにぃが現在の我々が知っているあにぃになるのは。

役作りのために行ったSMバーでSMとの運命的な出会いを果たし、口腔内フェチでアナルフェチ、それも肛門は外よりも中が好みという突き抜けっぷり。

女性のタイプは「変態かどうか」の一点のみに収斂。「XVideos」では塾女系ばかりを集中的に見るというクセの強さ。さすがあにぃ、お気に入りの飲食店を食べログで評価するばかりでなく、XVideosもしっかり使いこなしているとは。

現在のあにぃは自分だけがSMを好きなだけでなく、まだ素直に慣れない同士を導く水先案内人でもあります。彼に話を聞いて自分の変態性に気づく人もいるといい、そうした行いの意義を考えれば、共演女優に「今度クスコ持ってくるから、中見せてよ」と言って死ぬほど引かれても仕方ないのかもしれません。いや、迷惑だな(笑)。

でも迷惑がったら思うつぼ。あにぃは潜在的には女性に蔑まされたいタイプのMですから。

撮影現場でも下ネタSM話をし続けるあにぃですが、その持ち前の明るさも手伝ってか昔から友達や知り合いは多くいるようです。

水素水やモリンガパウダー、スーパーセラピスト、中国宮廷護衛護身術、などなど端から見たら何それ大丈夫と言いたくなるような、多種多様な物事にのめり込んでいます。

でも、あにぃは自分のこだわりを強要することはしません。人と人を繋げることについてのパートでは次のように語っています。

行くか行かないかは自由。自分の通っているマッサージ師にしかかからないとか、西洋医学しか信じなくて、漢方なんかは絶対飲まないという人も結構いるので。でも、本当に困ったら、藁にもすがる気持ちで行くだろうから、とりあえず紹介だけはしとこうと思って、教えておくんです。(p.67)

自分が好きなものをとことん信じ、押し付けるのではなくただ扉を開いておく。あにぃらしい気遣いと器の大きさが現れたエピソードです。

あにぃを前にした私たち読者は、いったいどのように彼と向き合えばいいのか。こんな話がヒントになるでしょう。

「バラエティに出演して、『今日は楽しかったなぁ』と思うのって、全部ツッコミがすこい人と共演したときなんですよ。(p.188)

僕は喋りますっぱなしだとただうるさいだけで、まったく面白くない(笑)。最近では若い俳優たちも僕をかまってくれて、小栗旬が「うるせぇよ!」とか、長澤まさみちゃんが「やらねぇよ!」とか言ってくれるんです。(p.189)

なるほど、この話を聞けば、一見読者おいてけぼりのぶっ飛んだ本書の内容も理解がたやすくなりますね。あにぃはいつでもツッコミ待ちなんです。

この本をこれから読むみなさまにおかれましては、この点をお忘れなきようお願いします。

最後にあにぃにひと言。バカか!