飲食店やっててもう一段突き抜けたい人は『グルメ多動力』読むといいかも

一年365日、外食だけの生活ってどんなものだろう。

仕事で毎日ランチを外食にしても、夜まで毎日外でとなると、なかなか大変そう。家よりは外が楽だけど、毎日店を探したりどこかに足を運んだりすることを考えると、段々とそっちの方が面倒になってきそうだ。

でも、そういう生活が当たり前の人にとっては面倒どころか、それがなんの変哲もない日常。店に迷うどころか新しい店ができれば、どこかから声がかかり、お気に入りの店が予約困難になってもびくともしない予約ループを掴んでいる。

と、こんな風に書くといかにも高級店や食通の間で話題の店ばっかり行くみたいだけど、それでは長続きしないだろう。大切なのは評判や格ではない。寿司さいとうも吉野家も、行きたい時に行くのだ(実際には前者に自分のタイミングで行けたらタダ者じゃないけど)。客が何かを食べたいと欲求し、店側がそれに応える。それ自体がコミュニケーションであり、形は違えど客を満足させるという点においても目指すところは同じだ。

外食が365日で‥というのは『グルメ多動力』を執筆したホリエモンこと堀江貴文氏が、この本の中で明かしている自信の食生活だ。今更ながらやっと書くことができた。

『グルメ~』は、動き続けることの大切さを説いた『多動力』に続く著作で、主に飲食店を経営する人に向けて、どうすれば客が絶えない店ができるのか、SNSや素材の産地といった実際的なレベルから、接客でもっとも大切な考え方まで網羅している。もちろん、時には堀江氏らしい厳しさを隠さずに。

堀江氏について
「歯に衣着せぬ物言い」
「目上に対して攻撃的」
と言ったイメージを持っている人も多いのではないだろうか。

個人的な話になるが、大学4年の時、昼間に家で何をするわけでもなくテレビを見ていると、六本木ヒルズにあった堀江氏の会社に家宅捜索が入り、その後の展開は多くの人の知る通りだ。それから10年ほど経って転職したのは、あのときテレビで見ていた会社の現在姿だった。わりと仲が良い同僚は家宅捜索の時に一番若かった新卒社員(一歳上)だったし、周りには「めちゃくちゃ厳しかった堀江社長」に揉まれた上司も少なくなかった。

だからと言って直線的には何の関係もないし、グルメ系の本を私が個人的によく読んでいるだけなのだが、周りから聞いた話が堀江氏の印象を作り、著作の理解を助けていることは否定できないかもしれない。

ひとつ思うのは堀江氏の物言いや行動は、時に不遜に映るかとしれないけど、その行動原理はもっと単純だろうということ。

私が思うに、その原理とは「合理的でムダがないか」か、そして「ユーザーを満足させているか」ということだ。

この軸を中心に考えれば、寿司屋で20年修行してもムダと良い放つのも、料理人がなんでYouTubeを見ないのかと疑問を持つのも自然なことだ。もっと言うと、料理人ではなく一介の食通にすぎない(日本語のあやだ)堀江氏が毎日外食してるだけでなぜこの本を書けたのかも理解できる。

お店を経営している人のなかには、この本に書いてあるくらいのことは既にやっているよ、という人も多いかもしれない。「LINEの予約グループもあるし、Facebookのコミュニティも作った」あるいは「Instagramも活用している」などなど。 でも、参加メンバーも少なくないし、常連もいる、ただ店が忙しくなるほどではない、という時は一度立ち止まってそのSNSが本当に目的にかなっているかどうかを考えた方が良いかもしれない。

ただ始めるのではなく、「取り組んでいることが目的に対して合理的か」「ユーザーを満足させているか」という視点から、見直すこと。それこそ堀江氏がいちユーザーの目線で店を経験するように。そうしたことを突き詰めていくことが、この本でいう店を繁盛させる方法なんじゃないかな、というのが私の理解だ。これは行間を読むような読み方だけど。

内容に即したところで言うとCHAPTER3の「2017〜18年、飲食を取り巻くモノ、ヒト、コト」と同5の「最も大事なのはコミュニケーション能力である」は飲食に関わる人なら必見の内容だと思う。取り立てて新しいことを書いているわけじゃないけど、ここ数年の飲食業界の空気みたいなものを分かりやすく説明している。中でも出色はCHAPTER5だ。表紙カバーの内側にも「必要なのはコミュニケーション能力なのだ」と書いてある通り、筆者にとっても大切なテーマなんだろうと思う。

というか、私が行く範囲の店でも、ここ数年は人気があってもコミュニケーション能力が欠けているといった店は皆無だ。もはや常識と言ってもいいのかもしれない。そんなのは当たり前だと思っても、視点を入れ替えると空回りになりがちなのがコミュニケーションだ。店と客、店員と客の間に生まれているのはどんなコミュニケーションなのかを考えることは、店の目指す方向を進む上でも重要なことだろう。

最後に、この本はグルメガイドとしてもかなり使える。東京だけじゃなく、通の人の間で話題の店がさらりと紹介されていて、行きたくなった店が一つや二つじゃなかった。恐るべしグルメ多動力。